「事故物件」と「社会貢献」。一見結びつかない両者ですが、事故物件事業を通して、社会貢献を実現しようとする稀有な会社があります。事故物件に特化した物件情報を掲載するウェブサイト『成仏不動産』です。
事故物件が、なぜ・どのように社会貢献につながるのか? 成仏不動産を運営する株式会社MARKS 代表取締役社長・花原浩二氏に話を聞きました。
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【インタビュイー紹介】
株式会社MARKS
代表取締役社長 花原 浩二 様
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──『成仏不動産』の取り組みが、社会貢献にどうつながるかを教えてください。
弊社の事業で目指す社会貢献の1つが、「事故物件の流通促進」です。
一般的に事故物件になると、物件の価値が損なわれ、賃料や売却価格を大きく下げざるを得なくなります。一方、世の中には事故物件でもOKなユーザーや投資家も、少なからずいます。これまでは事故物件の情報が乏しく、両者が結びつくことはほとんどありませんでした。
そこでスタートしたのが『成仏不動産』です。事故物件の情報を紹介し、事故物件を売りたい人と買いたい人をマッチングすることで、事故物件の流通を促進できればと考えています。
──これまでの取引件数は?
弊社では、事故物件の買取を、2020年10月に開始しました。2021年3月現在、買取から売却まで終えたのが3件、買い取った事故物件は5件、買取契約済みとなった事故物件は8件、遺族間の話し合い待ちの事故物件が10数件あります。
実際にこの事業を始めてみて、世の中には事故物件が平気という人や、事故物件でも平気な使い方をできる人が、一定数いることをあらためて実感しました。平気な人がイメージ以上に多くて驚いたというのが正直なところです。したがって、この先はより事故物件の取引が増えていくだろうと、手応えを感じています。
──事故物件でも平気な使い方とは?
さまざまありますが、たとえばグループホームに転用したり、外国人用のシェアハウスにしたり、動物のブリーダーに貸し出したりといった転用のしかたです。
ちなみに弊社が事故物件を通して行いたい社会貢献は、事故物件の流通促進以外にも、いくつかあります。
──どんなものでしょう?
たとえば、孤独死問題の改善です。日本では高齢化や単独世帯化が今後さらに進み、孤独死はより大きな社会問題となるでしょう。事故物件事業を通じて、その問題も改善していけるのではないかと考えています。
──具体的にどう改善しようと考えていますか?
肝になるのが、できるだけ早期に孤独死を発見することです。基本的に発見が遅くなればなるほど、物件価値の毀損も大きくなるので、早く見つけて毀損を最小限に抑えることが重要なのです。
また実際に事故物件に入ってみると、汚れた茶碗や読みかけの本、家族の写真などがそのまま残されています。人生がぷっつり途切れてしまった感じがして、怖いというより切なくなり、心が痛みます。そうした光景を目の当たりにすると、孤独死そのものを減らしていかないとダメだなとも感じさせられますね。
孤独死の早期発見や、孤独死そのものを減らすには、センサーなどを設置し入居者の動きを一定期間確認できない場合に連絡や通知を行う「見守りサービス」が、1つの有効な方法となります。
また弊社では「住宅確保要配慮者への住宅提供」も、進めていく予定です。
──住宅確保要配慮者への住宅提供とはどういったものですか?
高齢者や外国人、障がい者など住宅を確保できずに困っている方たちに、入居可能な住宅を紹介する事業です。こちらに関しては、投資家向けに事故物件情報を提供する会員制サービス「成仏物件倶楽部」にて、会員に「住宅確保要配慮者の入居を歓迎しますか?」というアンケートを行っています。そして「歓迎する」と答えた会員には今後、住宅確保要配慮者の入居が決まっている物件の情報提供を、優先的に行っていきます。
また、弊社が2020年6月に立ち上げた『高齢者と外国人と事故物件オーナーのための賃貸マッチング』サービスを通しても、入居斡旋などを行っていく予定です。住宅確保要配慮者への住宅提供に関しては、扱う物件数が増えないとなかなか事業としてスケールできないので、はっきりと成果が出るのはまだ先になるとは思いますが、鋭意進めていきます。
──事業規模を大きくしていくために、どんな施策を考えていますか?
たとえば葬儀関係の会社さんと提携して物件情報を入手したり、あるいは外国人に特化した事業を手掛ける会社さんと組んで外国人入居者を募ったりするなど、いろいろと仕掛けていく予定です。
また事故物件の取引に関しては、他の不動産以上に“ブラックボックス”の部分が大きい実情があります。売り手側としては、いくらくらいで売れるのか、事故物件を再生するにはどんなことをする必要があるのか。買い手側としても、いくらくらいで買うのが適正なのか、事故物件はどれくらいの利回りで運用できるのか。現状ではそうした情報がほとんど出回っていないため、いざ当事者になった時、多くの人が途方に暮れてしまうのです。
そうしたブラックボックスを透明化していくことも、成仏不動産のミッションだと捉えています。したがってデータもある程度たまったら、どんどん公表していきたいです。情報を止め、うちだけがおいしい思いをしようという考えは、全くありません。
──成仏不動産の事業を通して、どんな未来を描いていますか?
将来的には、事故物件以外の“ワケあり物件”も取り扱っていきたいと考えています。世の中には事故物件以外にも、たとえば「再建築不可物件」や底地権のない「借地権の物件」、「ハザードエリアにある物件」など、多くの人が運用に困っている物件がいろいろあります。そこでも同様に、そうした物件がOKな人とのマッチングや、取引の透明化の促進を行っていきたいです。
そんなふうに「見る角度を変えながら、賢く不動産を選ぶ」というテーマで、事業を展開していきたいなと思います。その結果、たとえば20年後くらいには事故物件を含むそれらのワケあり物件が、“ちょっとお得なもの”と認知される世の中になっていたらいいですね。