不動産投資で物件を買う時に、なんといっても重要な要素となるのが「価格」です。利回りに大きく関わってくるだけに慎重に吟味して、できるだけおトクに買いたいところですよね。
そもそも物件価格とは、どんな内訳なのでしょう。不動産業者は、はたしてどれくらいの利益を取っているものなのか。その利益の枠内であれば、もしや値引きもしてもらえるかも?
今回は、不動産投資用マンションの物件価格に関する、そんなレアで気になる話をお届けします。
業者の利益はどのくらい乗っているのか
まず物件価格には、当然ながら土地代、建設費、宣伝広告費などをあわせた開発費が含まれています。これがなんといっても一番のウェイトを占めます。
では、気になる不動産業者(デベロッパー)の利益がどれくらいなのかをご紹介しましょう。3000万円くらいの新築物件なら、利益は300~500万円くらいのことが多いのではないでしょうか。ただ、最近は都心の物件やデザイナーズ物件などを中心に、価格が割高になっているものもあります。中には利益を1000万円くらい取る、買う側からしたら“くせ者”な業者もいるかもしれません。
当然、不動産業者が値引きするとしても、この利益の範囲内となります。でも残念ながら、物件価格を値引きしてくれる業者は、そうそういないでしょう。当然ながら、値引きが頻発すると経営が圧迫されるからです。特に業者にとって怖いのが、“値引きのスパイラル”に陥ってしまうことです。
不動産投資の営業の世界では、物件を買ってくれた人に新たに見込み客を紹介してもらう“紹介営業”が、大きな営業手段となっています。だからいったん値引きしてしまうと、その人から次の見込み客にも値引きの話が伝わってしまう。さらにはそのお客からまた次のお客へと伝わってしまう……。
そうやって“値引きはありえる”というのがどんどん波及してしまったら、値引きをせざるを得ない案件が増え、会社として大きな利益減となってしまいます。「一人を値引きすると、他の人たちも値引きしなくていけなくなる」という、まさしく値引きスパイラルです。これは不動産業者として、なんとしても避けたい状況なんです。
だから多くの不動産投資業者は、物件価格の値引きはしないというのを前提に販売しています。もし値引きが発生したとしても、それはかなり例外的なケースではないでしょうか。
でも、実際に値引きを提案されましたけど…
でも、中には不動産業者の側から値引きを提案してくるケースもあります。え、値引きは原則しないのではって? はい、そのとおりなのですが、実際、値引きを提案する業者もいるにはいるんです……。どういうことか、ご説明しましょう。
物件をローンで購入する場合、融資をする金融機関によっては、「物件価格の95%しか融資できません」というケースがあります。物件価格が3000万円であれば、95%は2850万円です。その際に不動産業者は融資範囲内で買えるように、「今回は特別に150万円の値引きをしますよ。特別なので、ご契約をお願いします」などとお客に提案するのです。普通に考えれば「150万円も値引きしてくれるのか、ありがたい!」となるでしょう。(そもそも営業マンからすれば、150万円の現金を捻出して貰いながら購入して貰うにはハードルが高くなりますよね。)
不動産投資の初期費用に関する記事はこちら
でも、これにはカラクリがあります。実は銀行が物件価格に満たない額しか融資しないのは、物件価格が相場や収益性と照らし合わせて高すぎると判断したケースが多いんです。要は「この運用プランでは、満額までは融資できません」というわけです。そこで業者は「今回だけ特別に値下げします」ともちかけ、購入を促す。
でも冷静に考えれば、本来の値付けが割高で、それを適正価格に近づけただけのこと。前述の例でいえば、普通は業者の利益が300〜500万円くらいのところを、物件価格を上げて700万円ほどに膨らませていたので、150万円値下げしても利益は充分に残るというようなイメージです。
だから純粋な値下げに比べると、その価値は大きく異なります。いうなれば、野球の守備で難しくもなんともない普通の打球をわざと難しくキャッチし、ファインプレーに見せるようなもの。要は、パフォーマンスとしての値引きです。
そんな“パフォーマンス値引き”の場合、契約の図式は以下のようになることも少なくありません。
悪質な“パフォーマンス値引き”のカラクリ
まず不動産業者は、物件価格3000万円と融資金額2850万円の差額150万円を、お客が支払ったという形でお客と売買契約を結びます。でもその裏では、お客と150万円分の価格値引き覚書を取り交わし、実際は2850万円で販売する。そして銀行には覚書は提出せず、3000万円の売買契約書のみを提出する……。
当然ながらこれは銀行を欺くこととなり、完全なルール違反です。特に下図の例では、お客からもらい受けることが売買のルールとなっている手付金まで値引き対象としていて、もしこんな業者がいたらコンプラインス無視を常套としたキケンな会社でしょう(下図参照)。
ちなみに銀行が100%融資しないのは、前述のとおり価格が相場より高く、適正価格までしか融資しないという考え方以外に、もう一つあります。それは、残りの金額を手出ししてまで不動産投資を始めるような意識の高い人であれば、返済の余力があり安全性が高いだろうという考え方です。後者の考え方に基づき、はじめから不動産ローンは物件価格から数%マイナスした額しか貸さない、と決めている金融業者もあります。こうした金融機関が融資元となる場合でも、同じように不動産業者は“パフォーマンス値引き”を行うことがあります。
というわけでまとめしょう。まずは不動産投資用物件の場合、物件価格そのものの値引きはかなりハードルが高いこと。そして不動産業者側から、100万円以上も利益を削ってまで「値引きしますよ」と提案するようなことは、普通に考えればそうそうないこと。その2つが大きなポイントとなります。
だからもし実際に値引きを持ちかけられたら、ぜひ今回の話を思い出し、本当に純粋な値引きなのか、それとも“パフォーマンス値引き”なのかを見極めていただければと思います。くれぐれも「●●●万円も値引きしてくれた♫」という勢いで、本来は買う必要のない物件を買ってしまわないよう注意してくださいね。