不動産投資用マンションを売る営業マンで、こんな営業トークをする人がいます。
「不動産投資はお金がかかりません。だから貯金が20万円でも始められますよ」
はたしてそれは本当なのでしょうか?空室のリスクはどのようにリカバリーするのでしょうか?
一括借上契約制度があったとしても20万円くらいの資金でスタートしていいものか心配ですよね。そこで今回は不動産投資を始める際の初期費用と、物件取得後のランニングコストがザッとどれくらいかかるかを紹介します。
不動産投資の初期費用が低く抑えられる“特殊な”理由
まずは初期費用から。初期費用といっても新築と中古では費用が変わってきます。新築をローンで物件購入する場合、金額が大きいものでいうと司法書士の登記費用が30~40万円、銀行へ払うローン事務手数料が10~30万円くらいかかります。他にも火災保険料が3~5万円、印紙代が1~2万円、そしてマンションの管理基金のようなものに15~20万円くらい支払う必要があることが多いです。これらを全て合わせると、初期費用はおおよそ70万円くらいになります。中古の場合は管理基金が発生することはあまりなく、その代わりに固定資産税などの精算が発生するケースが多いようですが、50万円くらいの初期費用になってくるでしょう。
不動産経営でどんな費用がかかるかについてはこちら
既に冒頭の営業マンの言う「20万円」を遥かに超えているじゃないか?確かにそのとおりなんですが、実はちょっとしたカラクリがあります。上に挙げた諸費用は近年ですと諸費用ローンとして融資に組み込むこともできるんです。その場合購入者が最初に支払うのは、コンプライアンス的に最低限必要な初期費用の手付金10万円となります。(諸費用50万円を35年ローン、金利2%でローンに組み込んだ場合に月々の負担は1,656円程度)
だから「貯金20万円でも不動産投資を始められます」という営業トークは、あながち間違えではないのです。実際、10万円ほどの手付金を払うのもままならないという資金規模でありながら不動産投資を始める人もけっこういます。
とはいえ、本当に20万円だけで何十年も不動産経営を続けられるかというと、まず不可能でしょう。物件取得後にランニングコストが発生するからです。次では、それがどれくらいかかるのかを見ていきます。
改修費用は10年間でたった15万円ほど
上記のランニングコスト以外にも不動産経営なので当然、室内設備を修繕したり入れ替えたりする改修費用がかかります。臨時修繕費と言われるものですね。中古物件の場合だと、こうした改修費用がまとめて発生し、短期間に数十万円が必要になる可能性もあります。
どんなものが改修費用として負担することになるのかはこちらの図をご参照ください。
一方新築の場合、普通は中古ほど改修費用はかかりません。特に最初の10年は設備もそうそう壊れないので、10年間で15万円程度で収まることが多いと思います。だから手持ち資金が乏しければ、変動要素が少なくて開始10年ほどの改修費用が安くすむ新築を選ぶのが、一つの現実的な選択肢となってくるでしょう。
では、物件を買って10年以上経った後の改修費用はどれくらいかかるのか。設備は10年も経てば次第に劣化してくるので、改修費用も大きくかさむのでは? いえ、それが意外とかからないものなんです。もちろん例外はありますが、新築・中古を問わずワンルームマンションを35年間持ち続けたとしても、上記の改修費用は30~50万円くらいですむことが一般的です。想像よりだいぶ低い費用感ではないですか?
といっても、35年間も物件を持ち続けたら、実際にはさまざまな修繕や設備交換が発生します。場合によってはリフォームも必要になるかもしれません。なのに、なぜその程度の費用ですんでしまうのか。以下にその理由を挙げます。
改修費用の多くが「敷金」で賄われる
まず1つめの理由として挙げられるのが、そもそもがワンルームマンションの設備の改修なんて、たかがしれていることです。3LDKのファミリーマンションならまだしも、ワンルームの規模であれば設備も最小限なので、修繕・入れ替えが必要になるものも限られてきます。
そして2つめの理由が、改修費用は基本的に入居者が契約時に払う敷金で賄われることです。通常、1~2ヶ月分の家賃分の敷金が支払われるので、多くの改修(壁紙やフローリングの清掃、主に設備の経年劣化を除いた原状回復義務のあるもの)はその範囲で賄えます。
さらに3つめの理由が、保険の存在です。もし入居者の過失で大きな改修(壁に穴を開けてしまった、フローリングに傷をつけてしまったなど)が必要になったとしても、入居者が加入する保険で賄われることになります。オーナーが負担するようなことにはならないのです。
こうした理由から、不動産経営といっても基本的にオーナーが多額の改修費用を負担するというのは意外と少ないものなんです。事実、中古を含めた5~6軒の物件を経営する知り合いのオーナーは、この10年間くらいで改修費用を15万円ほどしか負担していないと言っていました。
というわけでまとめると、不動産投資は資金が20万円でも始められるけど、その後のランニングコストや改修費用を考えるとそれ以上の経費が確実にかかる。とはいえ10年、20年、30年と物件を持ち続けても、自己負担しなくてはいけない費用はイメージ以上に少ない。
だから不動産投資の営業マンにシミュレーションされたランニングコストとは別に、何かあった時に使える貯金や切り崩せる資産が50万円以上もあれば十分に経営していける。もし100万円もあればかなり余裕を持って経営できる。そんな費用感になるでしょう。
いずれにせよ一つ確実に言えるのは、こうした買った後の費用を一切伝えず「お金は全然かかりません」「貯金20万円でも大丈夫です」などと聞こえのいいことを言って買わせようとする営業マンは、問題アリということです。そこには「買わせるだけ買わせたら、あとのことはどうなってもこちらには関係ない」という考えがありありと伺えます。当然、信頼には値しないので、他のことも話半分に聞いた方がいいかもしれませんね。
信頼できる営業マンはランニングコストの変動要素をしっかりと説明し、臨時修繕費の見立ても含めて提案してくれるので、そんな営業マンに巡り会いたいですね。