現役サラリーマン大家が語る!事業規模の大きくない大家に税務調査が入ることはあるのか?

税務調査と聞くと、少なくとも億円規模で利益を出している富裕層にしか入らないイメージを持っている方が多いかと思います。実際に、私の周りにも税務調査の経験がある個人事業主はいませんし、私自身も税務調査は自分には無縁なものだと思っていました。

しかし、不動産投資家は、給与所得以外の不動産所得が発生するため、確定申告をする義務がありますし、確定申告は自分で数値を調整できてしまうという実態を税務署は把握しています。だから少なくとも給与所得のみしか発生していない方に比べ、税務調査が入る可能性が高いことは事実です。

とはいっても現実的には、所得規模が小さい事業主に対して税務調査が入ることは滅多にありません。ところが、私は実際に税務調査を受けたことがあります。

貴重な経験となりましたので、今回はその時のことをみなさんに共有いたします。万が一税務調査が入った場合でも、問題なく対応できるよう、準備をするきっかけになれば幸いです。

税務調査はサラリーマン大家にもやってくる

まず念頭に入れていただきたいのが、私自身が証明しているようにサラリーマン大家にも、税務調査はやってくるということです。そういった意識を持っているだけでも、今後の確定申告に対する意識は変わっていくかと思います。

ちなみに、その当時の私の不動産収入は800万円~1,000万円(都内に区分5戸所有)、加えて民泊収入が1,500万円程あり(現在は撤退済み)、両方の収入から必要経費を差し引いて20万円程度の不動産所得を申告しておりました。

従って、富裕層と言える水準ではありませんでした。

税務署は大きな金額の追加税金を徴収できそうな事業者に税務調査をするというのが基本だと思っていたので、私は税務調査官に調査が入った理由を尋ねてみました。すると、不動産所得が発生してちょうど7年が経過するタイミングだったのでという回答がありました。

個人で青色申告をしている事業主は税務資料の保管期限が7年となっています。そういった意味で、初期の税務資料が廃棄される前に減価償却費の計算根拠や購入時の費用処理を確認したかったのかもしれません。実際に、7年前の物件購入時の資料提出を求められ、提出しました。

ただ、税務調査官は調査理由を全て話してはくれません。その当時は民泊収入があったので、そちらの関係で税務調査に入った可能性もありますが、少なくとも大きな所得規模でなくても税務調査が入る可能性はあるということです。

結果的には、不動産所得として申告していた民泊収入は、雑所得として申告すべきという指摘だけ受け、数万円の追加税金を支払っただけで税務調査は終わりました。その時以来、税務処理についてはより注意を払うようにしています。

それにしても、税務調査を乗り切るうえで何が効果的だったのでしょうか。それを次の章でご説明します。

税務証憑の効果的な保管方法

まず、税務調査に対応するためには、総勘定元帳の準備が必要です。総勘定元帳というのは、費用項目ごとの発生日、金額、そしてその支払証憑(領収書や請求書等)などを集めた会計帳簿なのですが、私は当時総勘定元帳を作成していませんでした。

しかし、経理マンとしての習慣で、毎日エクセルで帳簿をつけており、発生した費用については、証憑番号をエクセルに記録し、実際の支払証憑にもその番号を手書きでつけていました。

そして、年度ごとに上記証憑番号の順に支払証憑をファイリングしていたので、総勘定元帳を作成するのは、少しの手間でできました。

上記のように整理しておけば、例えば、証憑番号⑩の9月1日A社へのリフォーム費用10万円の証憑を見せて下さいと言われた時に、すぐに証憑を見つけ、税務調査官にお見せすることができます。

実際に、税務調査官の方が、「個人事業主の方でここまで整理された証憑管理は初めて」ということを言っていたので、相手の心象を良くする意味でも効果的だったと思います。

そこまで難しいことではないと思いますので、ぜひ試してみて下さい。

税理士報酬は一種の保険料

そして、この税務調査を通じて、税理士の存在の重要性を実感しました。

私は、毎年確定申告代行費用として、税理士の方に4万円お支払いしています。不動産所得の申告だけであれば簡単なので自分で申告をすることも検討しましたが、現在はどんなに簡単でも税理士に代行をお願いし続ける方針です。

なぜかというと、税務調査を自分で対応すると、リスクがかなり高まるためです。数年に1回でも税務調査が入る可能性があるのであれば、税理士を税務署とのやりとりの窓口とし、確定申告を代行してもらうために、お金を払う価値は十分にあると考えます。

もし自分で確定申告を行って税務調査に入られた場合、税務調査官とのやり取りは全て自分でやらなければなりませんし、税務署に自ら出向かなければなりません。

税務署対応の経験がほとんどない方が、どういった資料を準備すべきか?何を説明すべきか?ということが分からず対応すると、追加税金となるリスクが高くなります。

例えば、先ほどの話でいえば、総勘定元帳を準備すべきということを私は知らなかったため、もし自分で対応していたら自作の資料なしで税務調査を受けることになり、結果は違っていたかもしれません。

一方、税理士の方に確定申告代行をお願いした場合、税務調査官との連絡は税理士経由で行うことになります。また、税務調査の場所を税理士事務所にすることもできますし、当日の税務調査対応も、自分は最初に挨拶するだけで退出し、後は税理士にお任せするということもできます。

そして、税理士は日々税務署員と接していて、何を提出すべきか?どういった説明をすべきか?といった対応に長けているので、税理士というワンクッションを挟むことは追加税金のリスクを下げることになります。

もちろん明らかに脱税行為をしている場合は、いかに税理士の方が優秀であっても追加税金を防ぐことはできませんが、税務には解釈によって処理が分かれるケースがあるため、その点税理士が対応するか、自分が対応するかで結果が異なることがあります。

上記の事実から、確定申告は税理士を通じて行うことをおすすめします。ぜひ検討してみてください。

ちなみにワンルームマンションを数戸所有するレベルであれば、総勘定元帳を作成する人はまれで、ここまで手間をかける必要もないかもしれません。

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現役サラリーマンオーナー・中林準

Jun Corporation代表 中林準。 立教大学卒業。 大学3年次、イギリスへ1年間交換留学後、日商簿記1級、米国公認会計士資格合格。 大学卒業後は、商社の経理部で主に海外事務所・現地法人の管理に携わる。 その傍ら、社会人2年目(2011年)の時に、区分マンション購入から、不動産投資を始め、2018年に1棟マンションを購入する。現在は都内に4区分マンション、1棟マンションを所有している。1年間グロス家賃収入は2000万円。過去に中国駐在経験もあり。CFP、1級ファイナンシャルプラン技能士、宅地建物取引士、管理業務主任者(資格合格)。 2013年9月Jun Corporation設立。若手のサラリーマン・OLを中心にした不動産コンサルティング業務を行っている。