ここ数年、不動産価格はかなり高い水準にあります。
だからこんなふうに考える方も多いのではないでしょうか。「今物件を買って不動産投資を始めるのは損だ」「物件を買うのは、何年か待って価格が落ち着いてからにするべきだ」と。
でも現実には、今このタイミングで不動産投資を始める人も決して少なくありません。果たして今始めて、投資として旨味はあるのでしょうか? その辺りの話を業界の裏話も交えながら紹介します。
ここ15年で、物件価格が20%近く上がった
確かに不動産の相場は、ここ何年かでずいぶん上がりました。主な理由としては東京オリンピックを控えていることや、建築ラッシュで人件費・資材費が高騰していることなどが考えられます。また消費税の増税も価格上昇の一因となっています。
では、具体的にどのくらい上がっているのでしょうか。たとえば都内の2000万円くらいのワンルームマンションであれば、ここ15年で価格が300~400万円ほど上がっているイメージです。場所によっては、2000万円だったのが4000万円くらいになっているものもあります。
そんな現状にも関わらず、なぜ今物件を買って投資を始める人がいるのでしょう? 結論から言うと、たとえ相場が高くても、投資としての目的をしっかり果たせる不動産投資法があるからです。
確かに、物件を安い時に買って高い時に売ることで得られる売却益を大きな目的とする不動産投資であれば、今物件を買うのは悪手かもしれません。この先相場が下がってしまったら、買った値段より高く売るのが難しくなるからです。
それに対し、物件をずっと持ち続けて家賃収入を積み上げていくスタイルの不動産投資もあります。月々の家賃収入を物件ローンの返済に充てることで、少しずつ、着実に自分の資産が積み立てられていく。そしてローンを完済して以降はずっと、家賃収入がそのまま自分の実入りとなる。そんな不動産投資法です。こうした仕組みを活かして「私的年金」の代わりにしたり、付帯の保険を「生涯保険」のように使う人も少なくありません。
要はこの不動産投資法であれば、売買益を狙うのではなく物件を持ち続けることが前提なので、購入価格がある程度高くても、上記のような目的はきちんと果たせるというわけです。もちろん、毎月のローン支払い額+物件管理費・修繕費から家賃収入を引いた「月々の支払額」が、無理なく支払い続けられる額であることが前提になります。
バブル崩壊時のような“暴落”はまずなさそう
そしてここが肝心なところなのですが、家賃収入というインカムゲインの恩恵は、早く始めれば始めるほどたくさん受けられます。なぜなら、人には寿命があるからです。当然ながら物件を30歳で買うのと60歳で買うのでは、生涯で得られる家賃収入総額は大きく違ってきますよね。
※不動産投資を早く始めるメリットについてはこちら
もちろん投資ですから、入り口=購入価格は安いに越したことはありません。とはいえ5年、10年後に不動産価格が今より安くなるかどうかなんて、正直プロの営業でもそうそう見極められません。だから値下がりするまで待つといっても、5年後、10年後にはかえって今より高くなっているかもしれないのです。
でも…。今物件を買ったら、かつてのバブルが弾けた時のように、不動産価格が「暴落」する恐れもあるのでは…? いえ、それはおそらくないでしょう。なぜなら、いくら今価格が高いといっても、バブル時代の高さとは本質的に違うからです。当時は不動産に異常な付加価値が付き、元の値段の何倍もの値が付けられていました。
対して今の不動産価格の上がり方は、多くが前述の通り20~30%くらいの上昇にとどまっているイメージです。だから、たとえ今後価格が下がったとしても、バブル崩壊後の暴落のようなことにはまずならないでしょう。
つまり売却益を頼りにするスタイルではなく、家賃収入をコツコツ積み上げていくスタイルであれば、いま不動産投資を始めるのは決して悪い手ではないのです。むしろ積み上げ式の不動産投資を始めるつもりなのであれば、早く始めるに越したことはないのではないでしょうか。
都心の“超プレミア物件”には手を出さない
ただ、始める際にぜひチェックしていただきたポイントがいくつかあります。まずは物件価格が相場に見合っているかどうか。いくら物件を持ち続けるのが前提といっても、他にもっと安い物件があるのに高づかみしてしまうのは投資効率が悪いからです。
そしてもう一つが、営業マンが提示する投資プランの中の家賃設定が相場に見合っているかどうかです。もし相場より高く設定されている場合、始めの数年はいいとしても、何年か後にその家賃では客付けが難しくなって一括借上額が下方修正される可能性が大いにあるからです。
そういう点で、今は絶対に避けておきたい物件があります。港区や千代田区など都心の超一等地に建てられて大きなプレミアが付いている物件です。たとえば港区の40平米の投資用マンションで、8000万円もの値を付けているようなものですね。
8000万円だと、フルローンを組んでも月々のローン支払い額は30万円近くになります。最初のうちは家賃30万円でも入居者が付いてトントンくらいの収支で経営できるかもしれませんが、何年か経ってプレミア性が弱まり、家賃が20万円くらいしか取れなくなるという事態も充分に考えられます。もしそうなったら月々の支払額は10万円近くにもなり、支払いがままならなくなって物件を差し押さえられる、なんてことも充分ありえます。
余談にはなりますが、こういった本来の価値よりも明らかに過大な付加価値が付いた物件は、売る営業マンにとっても「こんな高い物件を買わせてしまっていいのだろうか…」「本当にこんな高い家賃を取れるのだろうか…」といった良心の呵責がつきまといます。実はこの業界では、それが精神的に苦痛で離職する人も少なくないんです。また一方で、そうした取り引きにすっかり慣れてしまい、良心の呵責など全く感じずに売る営業マンも残念ながらいます…。
あらためてまとめると、不動産価格が高騰している今であっても、物件を売らずに持ち続けるスタイルの不動産投資であれば充分にやる価値はあるということになります。ただその際は、物件価格や家賃設定が相場と比べて適正かをきちんと見極めること、そして大きなプレミアが付いた物件には手を出さないことが大切になります。これから不動産投資を始めようという方は、その辺りをぜひ念頭に入れていただければと思います。