不動産投資型クラウドファンディングとは?
今やすっかり世の中に定着しつつある、クラウドファンディング。最近では「不動産投資型のクラウドファンディング」まで登場しています。すでにさまざまな不動産投資会社が参入し、盛況となっているファンドも少なくありません。
不動産投資型クラウドファンディングは、ネット上で出資者を募集し、募集主は集まったお金を元手に不動産投資を行うというのが一般的なやり方です。そして不動産投資によって得られた収益が、出資者に分配されます。
投資先は区分マンションから商業施設、ホテルまで多岐にわたり、物件価格もピンからキリまであります。多くの場合、出資者は一口1万円から参加でき、「小資金で不動産投資に参加できる」という点が人気の一因となっているようです。配当金の利回り(出資金に対する、1年間で受け取れる利益の割合)は3~6%程度が一般的ですが、中には8%以上の高利回り案件も存在します。出資期間は、2年間程度のものが多いようです。
もし利回り8%の案件に100万円出資したら、順調にいけば1年間で8万円、2年間で16万円のリターンを受け取れることになります。銀行に貯金するくらいなら、利率のうえではこちらの方が遥かに優秀です。
それにしても、こうした不動産投資型クラウドファンディングは、なぜビジネスモデルとして成立しているのでしょう。なぜ多くの人にリターンを返せるほど、収益を上げられるのでしょう?
不動産投資型クラファンが成立するカラクリ
このビジネスモデルの大きなポイントは、物件を「現金」で購入できるところにあります。
一般的な不動産投資は金利2%程度のローンを組んで購入するのに対し、不動産投資型クラウドファンディングは出資者から出資金を募ることで、現金で物件を一括購入できます。それにより、利息の乗らない価格で物件を取得することが可能になるのです。
たった2%であっても、たとえば1億円の物件を金利2%・35年ローンで購入するとなると、トータルの支払額は1億3913万円にものぼります。対して現金による一括購入なら、当然ながら1億円そのもので買える。だから現金で買えることの意義は非常に大きいのです。
また、まとまった現金があると、債権を回収するために強制的に売られる「競売物件」の購入も可能になります。
たとえば市場価格が2000万円ほどの物件であれば、競売では1300万円程度で買えることがよくあります。一般的に競売物件の価格は、市場価格の6~7割といわれます。とはいえ競売は現金取引きのため、競売が公示されてからすぐに資金を調達できる人でないと買えません。実際、競売に参加する不動産業者の社員は、かばんに何千万円もの札束を入れて出向きます。
こうした普通の人にはなかなか入札の難しい競売物件であっても、現金を公募で集められる不動産投資型クラウドファンディングであれば、可能になるというわけです。
クラウドファンディングの募集主は、こうして安く手に入れた物件をまずは2年ほど賃貸経営に回し、その賃料収入から自社の利益を引いたうちの残りを出資者に分配します。そして2年ほどの運営期間を終えたら、物件を売却する。割安価格で購入した物件だけに、多くの場合、利益を大きく乗せた値で売れます。その売却代金から、出資者より預かっていた元本を返還し、残りのお金が募集主の利益となる。これがオーソドックスなビジネスモデルです。
こうして収益を得られる以外にも、実は募集主にはもう1つメリットがあります。それは、出資者がクラウドファンディングで不動産投資に参加したのを機に、募集主が販売・運営する実物の不動産投資の方も始める可能性があることです。要は不動産投資型クラウドファンディングは、非クラウドファンディングの不動産投資の集客にも繋げられるというわけです。
残念ながら、資産形成には向かない
このように、出資者にも募集側にもメリットがあるように見える不動産投資型クラウドファンディングですが、正直、投資としての旨味は限定的といえるのではないでしょうか。確かに利回りが8%あり、100万円が1年後に108万円になるのであれば、貯蓄より遥かに効率的です。とはいえ「資産形成」という観点からみると、1年間に単発で8万円を増やしたところで、言葉は悪いですが「だからなんなの?」という話になってきます。
要は年利8%といっても、それが1年とか2年に限られたものであるなら、それにより資産形成が完了することは決してないというわけです。資金を1000万円作りたい人が、2年で18万円増やしたところで、1000万円には全く到達できません。そう考えると、100万円どころか最小ロットの1万円を出資して1年間で800円を受け取るというのは、果たしてどんな意味があるのかな?と思ってしまいます。
そもそも、不動産投資型クラウドファンディングにはリスクもあります。募集時に提示された利回りが、必ず保証されるわけでは決してないのです。たとえば、もし出資金が集まり不動産経営が始まっても、客付けがうまくいかず家賃収入が想定より低ければ、出資者への分配金もその分少なくなりかねません。あるいは物件が取得価格より低い値でしか売れず、出資金より低い金額が戻される、要は元本割れを起こす可能性もあります。
それでも、もし不動産投資型クラウドファンディングを「資産運用」ととらえ、数千万円規模の資金を投じるのであれば、それはそれで投資として価値はあるのではないでしょうか。いくら2年程度に限られた話であっても、利回り8%のものに2000万円を出資すれば1年で160万円、2年で320万円と、かなりまとまった運用益を得られるからです。まさに「お金に働いてもらう」状態です。
とはいえ、前述のとおりリスクもありますので、出資先はしっかり吟味する必要があるでしょう。
そんなふうに大きな資本を投じるのでないなら、やはり不動産投資型クラウドファンディングは、資産形成に向いているとはいえません。それこそ「本格的に不動産投資をする前のお試しに」とか「話題作りのために」などと、ある程度割り切って活用するのが賢明ではないでしょうか。