検証!ワンルームマンションは数十年後も賃貸に回せるのか問題
ワンルームマンション投資は、毎月コツコツと数千円~1万円程度のお金を積み立て、ローン完済後に家賃収入を何十年にも渡って得続けるビジネスモデルです(*)。それだけに早く始め、長く賃貸経営を続けるほど、トータルの収支は良くなります。長くやればやるほど、“うまみ”が大きくなるわけです。
とはいえ、そこで一つ大きな疑問が浮上します。ローン完済後、築40年、50年、60年と経った物件で、まともに賃貸経営ができるの?という疑問です。なかなか入居者がつかず空室が目立つようになるのでは? 部屋を埋めるには、家賃を大きく下げなければいけないのでは??
そんな疑問を解消すべく、現代のワンルームマンションの耐久性がどれくらいか、そして数十年経った時に賃貸経営が本当に成り立つのかどうかを検証します。
欧米とは築古物件に対する価値観が全く違う
ためしにHOME’Sなどの大手不動産サイトにて、都内で任意の場所を決めて1Rや1Kの物件を検索し、築年数順に並び替えてみると…。築50年・60年を超える物件も、普通に出てきます。さすがに室内をリノベーションしているものが多いのですが、意外にも設定賃料は、新築の物件とそこまで大きくは変わらない、ということもあります。中には以下のように、築80年を超えながらも15万円近くの賃料で貸しに出しているような、“現役バリバリ”の1Kもあります。
とはいえ、そうした築古物件にどれほど入居者がついているのかはわかりませんし、築60年を超えるような物件は全体の中では一部です。ましてや築100年を超える物件は、そうは出てきません。対して欧米では、築60年を超える物件がごく普通に愛用されていて、築100年を超えながら“現役バリバリ”の物件も全く珍しくありません。この違いは何なのでしょう?
そうした違いを生んでいる大きな要因が、日本と海外の「築古物件に対する価値観の違い」です。日本では建物は古くなればなるほど価値がなくなるという価値観が主流で、何十年・何百年と長く大事に使い続ける意識は、特定の物件をのぞいてほぼありません。したがって日々のメンテナンスも最低限のものとなり、ある程度古くなると「建て替え」が大きな選択肢となります。いわゆる「スクラップ&ビルド」の考え方です。
対して欧米では一般的に物件は古くなるほど愛着が増していき、価値があまり下がらないだけでなく、かえって価値が上がる場合もあります。したがってメンテナンスをきちんと行いながら、何十年・何百年と大切に使っていく意識が根付いています。
また、日本は地震が多いことも無視できない要因です。これだけ大きな地震が頻繁に起こる環境だけに、そもそも建物は何百年も使い続けられるものではない、という考えが主流になっているのではないでしょうか。
ここ20年で建物寿命の常識が大きく変わった
ところが、そうした価値観は近年変わりつつあります。背景には、建物の「寿命」の捉え方が、近年変わったことがあります。寿命といえば、建物には耐用年数というものがあり、鉄筋コンクリート造(RC造)は47年、木造・合成樹脂造は22年などと「法定耐用年数」が決まっています。ただ、これはあくまで税法上の減価償却費のために定めた数字で、決して「使用できる期間」ではありません。
対してここ20年ほどで、マンションの躯体となる鉄筋コンクリートの寿命は、おおむね100~120年という見解が主流になりました。たとえば日本建築学会は2004年と2009年に公表したデータを通し、タイル・塗装の保護や定期的なメンテナンスを行えば、鉄筋コンクリート造(RC造)は100年以上の耐用年数を確保できるとの見解を示しています。
また2013年に発表された国土交通省による「中古住宅流通促進・活用による研究会」のレポートでは、鉄筋コンクリート造(RC造)の寿命はおおむね120年とされました。
加えて国の施策により、地震に対する備えも強化されています。まず1981年6月1日の法改正で、建物に求められる耐震基準が厳しくなりました。そして2006年には、さらなる法改正により建築物の耐震診断及び改修によって、安全な構造であることの確認が求められるようになりました。
実は近年の大地震において、マンションはそれほど甚大な被害を受けなかったというデータもあります。たとえば東日本大震災におけるマンションの被害状況は、マンション8万5798棟のうち大破は0棟、 中破は61棟(0.071%)、小破は1070棟(1.247%)、軽微・損傷なしが8万4667棟(98.682%)でした(※1)。
熊本地震においても、マンション5973棟のうち大破が1棟(0.02%)、中破が5棟(0.08%)、小破が151棟(2.53%)でした(※2)。
※1:東日本大震災 被災状況調査報告によるデータ
※2:一般社団法人マンション管理業協会によるデータ
とりわけワンルームマンションは建物内で部屋が小分けになっており、柱の数も多くなるため、間取りの大きなマンションより屈強だとも言われています。
こうした建物寿命の捉え方の変化も手伝い、近年日本では、欧米のようにメンテナンスを施しながら古い建物を大切に使い続ける意識が高まっています。実際に2010年代に入ってからは、古い建物の内部を設え直して付加価値を高めて利用する「リノベーション」のブームも起こっています。こうした流れは、今後も確実に強まっていくでしょう。
老後まで、そして死後まで賃貸経営が続くかも
以上を鑑みると、ここ20年以内くらいに新築で買ったワンルームマンションであれば、築50年、60年くらいまでは充分に賃貸運用できるのではないでしょうか。それどころか、築100年を超えるまで賃貸運用を続けることも、全く非現実的な話ではないと思います。
もちろん、そのためには相応のメンテナンスが求められますし、何十年に一度かは大掛かりなリノベーションが必要でしょう。いずれにせよ50年後・60年後は、築古物件の家賃水準が、現代よりだいぶ上がっていると考えられます。
ワンルームである点も、長期運用の大きな後押しとなります。現代でも都内には単身者が多く、ファミリータイプの間取りに比べて単身者向けの1R・1K・1DKには高い賃貸ニーズがあります。単身者は将来も増加していくでしょうから、ワンルームのニーズは高くあり続けるのではないでしょうか。
もちろん、これらは不確定な未来の話であり、言い切ることは決してできません。また、取り壊しや建て替えの可能性もある程度は残るでしょう。ただし基本的に取り壊しや建て替えの際には「建て替え決議」により、所有者および議決権の5分の4以上の賛成がない限り行えないので、取り壊す際にはオーナーには相応の保障がなされます。
というわけで、「ワンルームマンションは数十年後にまともに賃貸運用できるのか?」という問題に対しては、見通しはかなり明るいと言えるのではないでしょうか。もし30歳で新築物件を買ってワンルームマンション投資を始めれば、35年ローンを払い終える65歳時点ではまだ築35年です。その時点では間違いなく物件は“現役バリバリ”でしょうし、そこから30年経った95才時点でも、賃貸経営は可能でしょう。
さらには自分が死んだ後ですらも、家族が継続して家賃収入を得続けられるかもしれません。そう考えると、ワンルームマンション投資の収益性は、実は長い目で見ると相当に優秀であると言えるのです。
営業担当者からの一方的な情報だけではなく、公平性のある不動産投資の正しい知識を持っていただきたいと考え、不動産投資情報のリアルな裏側を包み隠さずお伝えいたします。 NAVIVAでは、不動産投資に関する裏情報の配信のほか、不動産に関するチェックリストの配布や無料相談や各種セミナーの開催など、不動産投資をお考えの方にとって、お役立ちになるような情報をご提供しております。