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不動産投資の「入居率」に騙されるな!実は入居率にもいろいろある

作成者: NAVIVA運営部|2020年12月09日

都内のワンルームマンションの入居率は高いが…

ワンルームマンション投資をはじめ不動産投資でよく登場するのが、「入居率」です。入居率とは、1棟のマンションやアパートのうち、どれくらい部屋が埋まっているかを示すもの。都内のワンルームマンション投資の場合、入居率は95%を超えることが珍しくありません。

入居率95%ということは、100部屋あれば空室が5部屋あることになります。つまりは20部屋あれば、1部屋が空いていることになります。都内のワンルームマンションの場合、入居率が97%や98%であることも珍しくなく、他のエリアに比べて入居率はかなり高水準です。

なぜ都内のワンルームマンションの入居率は、それほど高いのでしょう? それはなんといっても、「ワンルームの賃貸ニーズが高いから」に尽きます。東京はもともとワンルームマンションを利用する「単身者」の割合が他のエリアよりも相当に高いうえ、その割合は今なお上がり続けています。

一方でマンションを建てる土地は限られており、都心にいけばいくほど、新たにマンションを建てる余地がないという現状があります。だからこそ、既存のワンルームマンションの入居率が、これほど高くなるのです。そんな状況もあり、最近は同じ都内でも中心地から少し離れた荒川、足立、江戸川、葛飾、西東京なら国分寺、立川、八王子といったエリアの開発が進みつつあります。

とはいえ、実は「入居率9●%」といっても、それを鵜呑みにするのは早計です。鵜呑みにしてしまうと、場合によっては痛い目にあいかねません。いったいなぜでしょう?

「入居率」を鵜呑みにしてはいけない理由

実は入居率には、大まかに分けて3つの種類があります。「時点」をベースにしたものと、「稼働」をベースにしたもの、そして「賃料」をベースにしたものです。

時点をベースにしたもの、いわゆる「時点入居率」は、その名の通り「その時点での入居率」を示すもの。たとえば2020年3月時点や、2020年5月時点などですね。当然ながら、たとえば3月と5月では数字が大きく変わる場合があります。そして時点をどこに定めるかは、数字を出す側がいかようにもできます。

したがって、「入居率99.7%」などとうたわれていても、もしかすると特に入居率が高かった時点の数字を出しているにすぎない可能性があるのです。そう考えると、もはや時点空室率はほとんど参考にはならず、むしろ業者が経営状況を“盛る”のにうってつけのデータとも言えるでしょう。

一方、稼働をベースにした「稼働入居率」は、1年間の稼働日数のうち、空室日数が全体の何%かを示したものです。たとえば10部屋を12ヶ月稼働させ、2部屋がそれぞれ3ヶ月空室になった場合は、空室月数6か月÷1棟全体の稼働月数120ヶ月で、空室率5%・入居率95%となります。時点空室率に比べると、こちらの数字の方がずっと実質的で誠実ですよね。

3つめの賃料をベースにした「賃料入居率」も、どちらかというと稼働入居率に近い考え方です。こちらは空室による未収賃料÷満室だった場合の年間賃料合計によって空室率が算出されます。たとえば全部で10部屋あるうち5室が賃料10万円で、残りの5室が賃料5万円だった場合、満室時の年間賃料合計は(5部屋×10万円+5部屋×5万円)×12ヶ月で、900万円になります。

そのうち家賃10万円の2部屋が、それぞれ5ヶ月間空室だった場合、2部屋×5ヶ月×10万円÷900万円で、空室率は11.1%=入居率は約89%に。1棟もののマンションやアパートを運用する場合は、こちらの賃料入居率が特に重要になります。

いずれにせよ、業者が入居率を示す場合、特にこの方式でないといけないという決まりはないので、好きな方式で表示することになります。つまりは、盛ろうと思えばそれなりに盛れるということ。それこそが「入居率の数字を鵜呑みにすると、痛い目にあいかねない」と述べる理由です。

家賃保証付きの場合、「管理物件全体の入居率」が肝

では、物件を選ぶ際に入居率は参考にならないのかというと、決してそんなことはありません。むしろ正しく利用すれば、物件の収益性を計る大きな目安となります。では、どうすれば正しく利用できるのでしょう?

まず大切になるのが、表示されている入居率の数字が、上記のどの種類なのかを確認することです。誠実な業者であれば「●年4月から、■年3月までの入居率」などと注釈を付けたりします。それがなければ、業者に直接問い合わせるのもいいでしょう。

それを前提としたうえで、もし目指す不動産投資のスタイルが「家賃保証」型の場合、その会社の管理物件全体の入居率を把握することが重要になります。なぜかというと、たとえ当該物件の入居率が低くても、会社の管理物件全体の入居率が高ければ、家賃保障額を安く改定されたり家賃保証を打ち切られたりする可能性は低いからです。

逆にもし会社の管理物件全体の入居率が低ければ、会社が運営を立ち行かせるために、家賃保証契約も不安定になる可能性があります。

一方で、家賃保証を付けない「集金代行」や「自主管理」のスタイルなら、逆にチェックすべきは当該物件の入居率になります。なぜなら空室になった時の損失はそのままオーナーがかぶるため、その建物自体がどれくらい空室が出やすいのかをつかむことが肝になるのです。したがって、「入居率98.5%!」などと表示されていても、それは会社の管理物件全体の数字かもしれないので、何に対する数字なのかをきちんと確認する必要があります。

また、都心から離れた郊外や地方の物件を買う際も、当該物件の入居率をきちんと確かめたいところです。都心の物件に比べると賃貸ニーズが下がるので、入居率がどの程度になるか、そしてそれで賃貸経営が成立するのかをきちんと吟味する必要があるのです。

当然、新築を買う際は当該物件の入居率は(まだ誰も住んでいないので)確かめようがありませんが、同じエリアの似た条件の既存物件の空室率をチェックすることで、ある程度は感覚をつかめるでしょう。入居率はその物件を管理する業者に聞くのもいいですが、ホームズなどの大手不動産サイトで物件名を検索し、「賃貸募集している部屋=空室」を数えることでも調べられます。

扱い方によってやっかいな敵にも、頼もしい味方にもなる「入居率」というデータ。物件を選ぶ際にはぜひ上記のことを念頭に入れ、入居率を“不動産投資を成功させるための武器”として使いましょう。