世の中には、さまざまな不動産投資セミナーがあります。試しに「不動産投資 セミナー」と検索してみると、それこそ無数に出てきます。まずは広告だけでもすごい数ですが、大規模なものから小さいものまで、リアルで行うものから、オンラインで行うものまで、本当にいろいろな不動産投資セミナーが世の中には存在します。
ではそうした不動産投資セミナーは、はたして行く価値があるのでしょうか?
もし「投資の視野を広げたい」と思っていたり、逆に「この不動産投資分野のこういう情報がほしい」と定まっていたりするのであれば、セミナーに行くのもそれなりに価値はあると思います。セミナーに出ることで、いい投資商品に出会える場合もあるでしょう。
とはいえ、セミナーで提案された内容をそのまま鵜呑みにして不動産投資を始めるのは、正直オススメできません。それはいったいなぜでしょう?
理由の大きな一つは、ひとくちに不動産投資セミナーといっても、前述の通りさまざまなものがあるからです。そして注意しなければならないのが、そのセミナーがどんな不動産投資スタイルを扱うかで、そのセミナーの中での“正解”も変わってくることです。
どういうことかというと、不動産投資には一戸建てに投資するスタイルもあれば、マンション一棟もの、アパート一棟ものを扱うものもある。他にもマンションの区分所有があるし、中古物件を狙うスタイルや、古家をリノベーションするスタイルもある。もちろんワンルームマンション投資もある。そして、そうした各スタイルごとに、不動産投資セミナーが存在する。だからこそ、セミナーごとに“いい物件”の基準が違ってくるというわけです。
たとえば、投機に近い形でとにかく高利回りで高いキャッシュフローを得たいのであれば、中古物件や古家を格安で買うのが一つの正解となるでしょう。もし不動産投資に付帯する生命保険効果や私的年金効果を求めるのなら、低利回りでも安定運用が望めるスキームの投資用ワンルームマンションが正解となるでしょう。また、不動産投資に節税効果も期待したい場合は、中古よりも新築がベターとなります。
そんなふうにして不動産投資セミナーでは基本的に、その不動産投資スタイルにおける運用の仕組みやメリットを紹介した上で、これがオススメですと自社の扱う商材を促す流れになることが一般的です(もちろん純粋に“勉強会”のようなものも中にはあるでしょうが)。
したがって、「セミナーに出れば出るほど、何がいいかわからなくなってきた」という声も聞かれます。出るセミナー出るセミナーで「これがオススメです」「こちらがお得ですよ」と別々のものを勧められたら、そうなるのも当然ですよね。そうして頭の中がいっぱいになって疲れてしまうと、根負けして不本意なものを買ってしまうことにもなりかねません。そうした事態を避けるには、どうずればいいのでしょう?
それには、「不動産投資で何をしたいか」を明確にすることが重要です。もちろん不動産投資なので、運用益を得ることが大目的にはなるでしょう。でもその中でもたとえば運用益重視だったり、少リスク安定型だったり、あるいは節税や保険などの付帯効果重視だったりと、人によって不動産投資に求めるものは大きく変わります。
それを絞り込むことで、不要なセミナーを選り分け、自分にとって必要なセミナーだけに出られるようになるというわけです。
もちろん、まずはいくつかのセミナーに出ながら自分の求めるものを明確にしていくという方法もあるでしょう。とはいえ、それでも異なる不動産スタイルのセミナーに2~3個も出れば、おおよそ見えてくるのではないでしょうか。いずれにせよ、目的を絞り込むことが、不動産投資では非常に重要なポイントとなることは間違いありません。
ただし、たとえ不動産投資の目的を絞り込み、それに見合った不動産投資スタイルのセミナーに出席したとしても、そこでの提案を鵜呑みにするのはやはりオススメできません。それはいったいなぜでしょう??
結局は投資なので、何より重要なのは「数字が適正かどうか」です。どんなに不動産投資スタイルが合致していようと、提案された物件の価格が高すぎたり、業者側が想定する賃料が相場に見合っていなかったりしたら、充分な投資効果を得られないからです。
たとえば渋谷のワンルームマンションを勧められたとしましょう。もし渋谷などのステータス性の高いエリアで物件を持つのが目的であれば、たとえその物件が相場より高くても“買い”かもしれません。でも本来、投資の目的は前述の通り、運用益を得ることです。それをふまえれば、相場より高い物件を買うより、エリアに関わらず相場と同等かそれ以下で売られているものを買ったほうが、運用益は断然上がるでしょう。
だからいくらステータス性の高いエリアの物件でも、相場より明らかに高ければ、投資商品としてはNGと判断すべきなのです。
あるいはワンルームマンション投資で、業者側が想定する月々の収支(家賃収入-ローン返済額)が毎月1万円のプラスだったとします。もしそれで運用し続けられれば充分な運用益が見込めるとしても、もし想定賃料が相場より高いものであったら、数年後に客付けのため賃料を下げざるを得なくなるかもしれません。そうして毎月の収支がマイナス1万円とか2万円に転じてしまったら、期待した投資効果はとても得られません。
要はセミナーで提案される数字が、相場と比べて適正とは限らないということです。もちろん適正価格の場合もあるでしょうが、何百万円、何千万円という高額の買い物をするわけですから、何も吟味せずに鵜呑みにするのは危険すぎます。
では、価格が適正かどうかを見極めるには、どうすればいいのでしょう? それには、自分で試算するのが何よりです。試算といっても、決して難しい話ではありません。普通にSUUMOやHOME’S、Yahoo!不動産といった大手不動産サイトで、対象物件と同じ条件を指定して価格を見比べるだけです。
たとえば相場を調べたい物件が練馬区のワンルームマンションであれば、同じエリア・平米数・築年数などで絞り込み、出てきた類似物件の販売価格をいくつも見てみる。同じようにして「賃料」や「●●年後の売却価格」などの相場も調べられます。要は、物を買う時に価格ドットコムなどで比較するのと同様の作業を、物件の場合でも行うのです。実は不動産投資会社のプロも、まったく同じ作業をして相場を調べています。
今回ご紹介したように、まずは不動産投資をする目的を絞り込み、そのうえで対象物件の相場を調べる。これさえきちんと行えば、不動産投資セミナーで自分にマッチしない情報や、有益でない商品に踊らされることはそうありません。
そもそも、投資の目的がきちんと定まっていれば、さまざまなスタイルの不動産投資セミナーに5個も10個も出る必要はないのでは?と思います。