重要事項説明(以下:重説)とは、不動産を購入する前に必ず宅地建物取引士の資格を持った人が、契約前に買主に説明する重要事項のことです。契約をするかの判断材料として、物件の周辺環境や利用の制限など買主が知るべき内容をあらかじめ買主に伝えます。契約後に「知らなかった。聞いていなかった」という事態をなくすため必須なのです。
重説の内容は難しい言い回しで書かれているので一見呪文のように見えてしまうかもしれません。ただ、読み解いてみると当たり前のことが書かれている事も多いです。実際、契約の現場にいって初見で重説を読んでも理解できないまま過ぎてしまうこともあり得ます。事前に確認ポイントを知っておくことで、説明を受けたときの理解度がぐんと上がるはずです。内容は全て大切な項目ではありますが、その中でもよくあるトラブルを基にポイントを解説します。
まず、物件の表示・建物に関してです。建っている場所や物件のスペックが契約書と同様であるかを確認しましょう。注意すべきは2点です。
「所有権に関する事項」 ・・・区分マンションを購入の場合、「所有権敷地権」が設定されていることがほとんどです。所有権敷地権は、建物と土地を別々に売買することはできず、必ずセットで取引されます。マンションは一つの土地に所有者が複数人いることになります。仮に土地だけを買ったはいいが、部屋が使えないという事態にならないようにしています。また、敷地権でなく土地に借地権がついている場合は所有者に借地料を払わなければいけないので注意しましょう。
「所有権以外の権利関係」・・・登記されている所有権以外の権利で一番多いものが抵当権です。ここでいう抵当権とは銀行が物件を担保にとることです。もしローンの返済できなくなった場合、銀行は貸したお金を回収するために物件を売って、貸した分のお金を取り戻すのです。
ここでは抵当権や他の権利が有なのか無なのかをチェックします。実際は、有になっている物件はよくあるので心配はいりません。何の権利が付帯されているかというよりも、一番重要なのは登記された権利が物件の引き渡しまでに抹消されるかどうかです。引き渡しまでに記載された権利が抹消されるのであれば問題ありません。
つづいて、建物の構造や周辺の制限に関する事項です。「危険箇所の該当の有無」にハザードマップについて説明することが新たに義務付けられたので詳しくみていきましょう。
危険箇所の該当の有無・・・津波、崖崩れ、土砂災害などの危険な区域に該当していないかが記載されています。2020年8月28日から危険箇所の項目として、「水害ハザードマップ」が追加されました。2018年の西日本豪雨、2020年には九州、岐阜で豪雨が起きるなど水害被害が増えてきているためこのような対処がされました。ネットで検索すると各区市町村でハザードマップが載っています。物件の検討段階から該当する場所なのかを確認した方が良いでしょう。
水害に関連し近年注目すべきは、地盤の液状化についてです。液状化とは緩い地面が液体化する現象のことです。液状化する土地なのかの説明義務はないので、自分で調べないとわかりません。過去のトラブル事例としては、東日本大震災で浦安市をはじめとする沿岸の地域で液状化したケースです。これにより多くの住民が訴えたところ、契約不適合責任に該当し損害賠償金が支払われました。東日本大震災の問題を機に売主側も、液状化する土地なのかを記載するようになるでしょう。
ちなみに、2020年4月から法律が変わり、瑕疵に対して買主が訴えられる範囲が広くなったのでより買主に寄り添った内容になりました。
最もトラブルになりやすい事項の一つが契約条件についてです。売主と買主の間で言った言わないの問題になりやすい部分なので特に注意が必要です。
瑕疵担保保証契約について・・・新築の場合、建物の主要構造部分や防水性能に隠れた瑕疵があったらあそれを修補してくれる保険に必ず入ります。この保険は売主業者が加入するものです。買主からしたら、もし業者が倒産しても瑕疵の十分な補修費が支払われるので安心材料になるでしょう。
引き渡し時期・・・いつ移転登記がなされるのかが記載されています。物件が自分のものになる日を把握しておきましょう。
売買代金以外に授受される金銭・・・売買代金以外にかかる費用とその目的を把握しましょう。主に、手付金、諸費用、修繕積立金や管理費などが書かれています。契約時には手付金を預けることが多いです。手付金は契約解除にも影響が出てくるので、目的と金額は理解しておきましょう。
契約解除に関する事項・・・クーリングオフ期間が過ぎた後、契約をキャンセルしたい場合に、業者へ渡した手付金を放棄することで、無条件に契約を取りやめることができる旨が記載されています。ただし、手付金0はやめましょう。放棄する手付金がないという事はそもそも「手付金解除」そのものの意味がなくなってしまいます。つまり、契約解除ができなくなってしまいます。
また、ローン審査が通らなかった場合の対応についても確認しておきましょう。基本的に預かった金銭は全て買主にお返しして、契約を白紙撤回することになります。この特約がないと、融資が組めなくても残りの金額を支払わなければならない可能性があります。
以上、重説を受けた際最低限チェックすべき項目を解説しました。重説は契約前の決断材料になる大事な書類です。全部を把握するのは難しいかもしれませんが、肝となる箇所を掴んでおけば必要以上に恐れることもなくなるはずです。