不動産投資では、物件をリノベーションしてから運用する手法があります。リノベーションによって物件のマイナス要因を改善したり付加価値をつけたりすることで、空室率を減らしたり、賃料を上げる効果が期待されます。もちろん売却価格も高められるでしょう。
では、ワンルームマンション投資の世界でも、その手法は通用するのでしょうか。リノベーションすることで、果たして収支は本当にアップするのでしょうか?
ワンルーム投資ではリノベが一般的ではない
まず1ついえるのが、ワンルームマンション投資をしている人で、実際にリノベーションをしている人はあまり多くないことです。それにはいくつか要因があります。まずは、ワンルームマンション投資自体の歴史が浅いこと。投資用ワンルームマンションが多く出回り始めたのは、バブルの時期といわれます。だから古くても築35年を超えていないことが多く、リノベーションの必要性はまだそこまで高くなかったりします。
そしてもう一つの大きな要因は、契約上リノベーションが行えないケースが多いことです。巷に出回る中古の区分ワンルームマンションは、不動産投資会社のブランドが付いたマンションであることが多く、たいてい不動産投資会社が賃貸管理を行っています。だから部屋の購入者は、基本的に勝手にリノベーションすることができません。賃貸管理する側としては、部屋ごとにそれぞれ独自のリノベーションをされてしまうと管理上困るためです。
ただ、運用を何十年も続けてから、その後の賃貸経営のテコ入れのためにリノベーションをしたいということであれば、不動産投資会社も相談に乗る可能性はあります。その際は自分でリノベーション業者を選べる場合と、不動産投資会社から業者を指定される場合の両方があるでしょう。
中にはそうしたブランドマンションではなく、区分マンションの購入者が自ら賃貸管理を行い、リノベーションを自由に行えるスタイルのワンルームマンションもあるにはあります。ただ、ネットをはじめ情報が乏しく、普通にはなかなか見つけにくいでしょう。
リノベは「投資効率」を充分に検討するべき
もし自分で自由にリノベーションが行える場合でも、リノベーションを行ううえでの「投資効率」は、充分に検討する必要があります。
たとえば100万円かけてリノベーションを行い、賃料を1万円上げることができたとしましょう。リノベーションをしなかった場合と比べ年間12万円のプラスですから、満室を続けてもリノベーション費用を回収するには9年近くかかることになります。これでは決して投資効率がいいとはいえません。
対して、もしリノベーション費用が50万円で賃料を1万円上げられるのであれば、5年近くで回収できることになります。もしリノベーションを実際に行うのであれば、そのくらいの投資効率は目指したいところです。
また最近は、不動産投資会社が古い物件をリフォームした後、ユーザーに売り出すというケースも見られます。それであればリフォームされた高付加価値物件を普通に手に入れられますが、当然、購入価格もそのぶん高くなります。そしてそこには、たいてい業者側のリフォームマージンが乗っているため、購入者にとってはかえって割高になりやすいのが現状です。
もちろん情報ルートがあったり、たまたま運が良かったりで、リノベーション可能なワンルームを見つけられる可能性もあります。その場合、一般的な投資用マンションとは異なり、かなり築年数の経った、いわゆる団地のようなイメージの物件が自然と多くなるでしょう。
それを格安で仕入れ、数百万円かけてしっかりリフォームを施して賃貸にまわせば、相場と遜色ない賃料、あるいは相場に付加価値を乗せた賃料で貸し出せるかもしれません。さらにはそれを数年後に、購入価格より高い値で売却できる可能性もあります。その場合、数年間分の賃料+売却益という確固たる利益を得られます。
また最近は大きめの間取りが好まれているため、少し時代遅れともいえる2DKなどの古い物件を格安で仕入れ、部屋を繋げて1LDKなどに改修することでグッと物件価値を高める方法もあります。
リノベすると、全く別の投資スタイルになる
ただしそうした安めの中古物件は投資として不確定要素が多いため、購入時に銀行からの融資がおりにくく、一般的なワンルームマンション投資のようにフルローンを組むことはまず望めません。多くの場合、まとまった頭金が必要だったり、購入費用の全てを自己資金でまかなう必要があったりします。
加えて購入後も自らリフォームの手配をしたり、客付け、賃貸管理などを行っていかなくてはいけません。また売却するにしても、築年数が経っているため買い手がローンを組みづらくなるため、売り先を見つけるのに難儀するケースも少なくありません。
それをふまえるとリノベーションを施してのワンルームマンション投資は、一般的なワンルームマンション投資のビジネスモデル=「資金的なハードルやリスク、手間を最小限に抑えながら時間をかけてコツコツ資産を築くもの」とは、全くの別物といえます。
ただ、今後はワンルームマンション投資の世界でも、リノベーションがもっと身近になっていくのではないでしょうか。なぜなら都内など資産価値の高い土地には限りがあり、当然ながらマンションを増やし続けることはできません。また90年代頃から隆盛となったワンルームマンション投資の歴史を鑑みると、今後築年数の深い物件がどんどん出てくることになります。
そうした状況を考えると、今後は既存の物件にリノベーションを加えながら活用していくスタイルが、どんどん一般的になっていくと考えられます。
とはいえ現状では、一般的なワンルームマンション投資と、中古ワンルームをリノベーションして運用する手法ではビジネスモデルが大きく異なるので、ぜひそれを念頭に入れておきましょう。それを承知のうえであれば、リノベ投資法もワンルームマンション投資として1つの選択肢になります。一方、より手堅く“お任せ”に近い形で運用したいのであれば、やはり通常のワンルームマンション投資を選ぶのが断然良いでしょう。