「不動産投資は、生命保険の代わりになる」。不動産投資の営業では、よくそんな謳い文句が聞かれます。はたして本当なのでしょうか。そもそも、不動産投資が生命保険代わりになるとは、どういう仕組みなのでしょう?
そこで今回は、不動産投資に備わる生命保険的な機能についてと、それが一般的な生命保険と比べて本当に得なのかどうかを検証します。
なぜ不動産投資が「生命保険の代わり」になるのか
生命保険の代わりになると謳われる最大の要因は「団体信用生命保険」、通称「団信」の存在にあります。
団信とは、物件のローンを組んだ人が死亡したり高度障害となり支払不能になった場合、金融機関に残債が全額支払われる保険です。つまりローンを組んだ人は、残債の支払いが免除されるのです。金融機関と物件購入者の双方を助ける保険といえ、物件をローン購入する場合の多くは、金融機関から団信への加入が義務付けられます。
そして団信が適用され、購入者に残される 残債なしの物件こそが、生命保険の保障にあたるものです。引き続き賃貸経営を行って家賃を得てもよし、しばらく賃貸経営してから売るのもよし。すぐに売却して現金化することもできます。また、たとえ不測の事態が起こらなくても、ローン完済後には物件という資産が手元に丸々残ります。
ちなみに不動産投資会社が販売する不動産投資のパッケージ商品には多くの場合、「疾病保険」的な機能もオプションでつけることが可能です。
代表的なのが、がん保険的な機能。これはがんにかかってしまった段階で、ローンの残債がゼロになるというのが一般的です。他には8大疾病をカバーするオプションもよくあります。こちらは8大疾病が発覚して就業不能になると、最長12ヶ月まで毎月のローン返済が免除され、さらには12カ月を超えた場合にはローン残高がゼロになるといった機能を備えていたりします。
定期保険にも終身保険にも弱点がある
では一般的な生命保険と比べ、不動産投資の保険効果のほどはどうなのでしょう。実はワリの良さに関しては、不動産投資の方がだいぶ上なんです。
まず一般的な定期型の生命保険、いわゆる「定期保険」の場合、定められた期間内であれば少ない掛け金で大きな保障を得られます。ただし所定の期間を超えると保障が受けられなくなり、支払った保険料はほぼ掛け捨ての状態になってしまいます。
たとえば死亡時に2000万円の保障を受けられる掛け捨て型定期保険に毎月数千円の保険料を払い続けるとします。もし所定の期間が60歳までとすると、万が一のことが起こったら60歳までは当然2000万円の保障を受けられます。ところが所定の60歳を超えると保障は受けられなくなり、戻ってくる金額もわずかなので、支払った保険料のほとんどが消えてなくなってしまうのです。
では支払った保険料が積み上がっていく積立式の「終身保険」の場合はどうでしょう。保障は生涯にわたって続き、万が一のことがなくても支払った保険料は基本的に自分の資産となりますが、ネックなのが月々の支払額の高さです。もし2000万円の保障を受けるために30歳から60歳まで保険料を支払うとすると、月々の支払額は5万5000円ほどにもなります。
不動産投資は「いいとこどり」
対して不動産投資の場合はこうなります。たとえば2500万円のワンルームマンションを35年ローン・金利2%で購入したとします。これをサブリースで賃貸経営すると、月々のローン支払い額から一括借上額として受け取る家賃収入を引いたものが毎月の支払い額となり、この例ではだいたい1万円程度になることが多いでしょう。
そしてもし購入から10年後に亡くなった場合、団信によりローン残高の約2000万円が免除になります。そこからもし賃貸経営をそのまま続ければ、毎月約7万2500円ほど、年間約87万円の家賃収入が得られる計算です。そしてそれを24年続ければ家賃収入の総額は2000万円を超えてきます。もちろん、その後も家賃収入は発生し続けます。
では、もし団信の適用後に賃貸経営を10年行ってから物件を1500万円ほどで売却したら、どうなるでしょう。そ場合、10年分の家賃収入約870万円+売却価格1500万円で、保険効果は2370万円となります。
他にも、団信が適用後にすぐ物件を売却する選択肢も当然あります。
さらには前述の通り不動産投資には、万が一のことが起こらなくても、ローンが終われば物件という資産が手元に残るという大きな強みがあります。
つまり不動産投資は、毎月の支払額を小さく抑えながら確固たる生命保“険効果を得られ、加えて万が一のことが起こらなくても支払金が 掛け”捨て とはならず、資産がきちんと残る。要は一般的な定期保険と終身保険のいいとこどりともいえるんです。
以下で不動産投資の保険効果の一例を紹介しています。
保険として(JoyfulInvestment株式会社)
不動産投資ならではの弱点やリスクも
一方で、不動産投資ならではの弱点もあります。まずは万が一のことが起こった時に、現金を受け取る保証がないこと。もちろん、手に入れた物件を賃貸経営に回せば家賃収入が、売却すれば売却金が手に入りますが、少なくとも賃貸経営または売却を行う必要が出てきます。
また一般的な医療保険のような「入院したら●●円」「手術したら■■円」といった細かな保障は、不動産投資では基本的に望めません。
そして相場の変化や経年により、物件の価値が下がるリスクもあります。基本的に賃料は年を追うごとに下がっていくのが普通ですし、土地の値段も常に変動しています。
とはいえ東京など大都市の物件であれば、土地の値段が大きく下がることはそうないでしょう。そもそも物件の価格は、建物の価格と土地の価格を足したもです。つまり、たとえ建物がぼろぼろになっても、土地分の価値はそっくりそのまま残るのです。だから2500万円で買った物件であれば、どんなにボロボロになろうと、売却時に1000万円を下ることは、まずないでしょう。
以上、不動産投資の生命保険機能の特徴をまとめると、このようになります。
- 不動産投資は万が一のことが起こった場合、団信という保険により、物件の形で保障される。
- 賃貸収入を得られることを活かせば、一般的な生命保険よりかなり大きな保険効果を得ることも可能。
- 保険として小回りが利かないことや、賃貸経営または物件売却の手間がかかること、そして資産価値が下落する可能性があるといった弱点もある。
どんな保険がベストかは、その人の生活状況や価値観により、大きく変わってきます。たとえば費用対効果を重視したいとか、万が一の時に残された家族を何より優先したいとか、今は多少無理してでも将来に備えたいとか。とにかくリスクを最小限にしたい等々、この機会に「大切にすることの優先順位」をあらためて考えてみてはいかがでしょう。