マンションの長期修繕計画等ガイドラインの見直しによりワンルームマンション投資はどうなる?

現在日本のマンションの総戸数は約654万戸であり(平成30年末時点)、国民の約1割がマンションに居住していると言われています。マンションを建てるさいは事前に長期修繕計画が立てられ、居住者やオーナーから修繕積立金を回収しマンションのメンテナンスを行っています。

しかし近年築40年を超える「高経年マンション」と呼ばれるマンションが急増しており、資金不足などの問題から適切な大規模修繕が行われていないものが増えていることや、
マンションの普及に伴い、マンションの大規模化やマンション管理の専門家や複雑化が起きているなど、様々な問題が波及しています。

そんな中、令和3年9月28日に国土交通省から【長期修繕計画のガイドライン】 及び 【マンションの修繕積立金に関するガイドライン】の改定が行われました。改定が行われたのは実に10年ぶりになります。

今回はガイドラインの改定のポイントと、改定されたことによりワンルームマンション投資にどのような影響を及ぼしていきそうなのかを解説していきます。

どのようにガイドラインが改定されたのか

まずは今回の改定にあたり主要な改定ポイントをみていきましょう。

【長期修繕計画のガイドライン】については主に下記の3点が改定されました。

  • マンションの省エネ性能を向上させる改修工事やエレベーターの点検など社会的要請を意識した内容が盛り込まれている。
  • ガイドラインの見直しの時期が5年程度と一定の指標が定められた。
  • 修繕計画の期間が30年以上かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上に変更になった。

着目すべきは"3"のガイドラインの計画期間の変更です。従来のガイドラインでは修繕計画の期間は中古マンションで25年以上、新築マンションで30年以上となっていましたが、今回の改定で新築も中古も30年以上と変更になりました。一般的に大規模修繕工事の周期は12年程度と言われています。修繕計画の期間が延長した頃により、今までより多額の工事費を見込んだ計画が必要となる可能性が高いです。

【マンションの修繕積立金に関するガイドライン】については主に下記の3点が改定されました。

  • 修繕積立金の目安に係る計算式が見直された。
  • ガイドラインの対象者に既存マンションの購入者も追加された。
    (従来のガイドラインの対象者は新築マンションの購入予定者のみでした)
  • 占有床面積あたりの修繕積立金の目安額が増額した。

特に”3”の占有床面積あたりの修繕積立金の目安額について、改定されたガイドラインでは一般的なワンルームマンションの大きさである20階未満、延床面積5,000㎡未満の物件の場合、1㎡あたりの修繕積立金は235〜430円、平均額は335円となっています。従来のガイドラインでは1㎡あたりの修繕積立金は165〜250円、平均額は218円でしたので、改定されたことにより、平均額ベースで1㎡あたり117円上昇しています。これを一般的な区分マンションの大きさである25㎡の物件に当てはめた場合、毎月2,925円、1年間で35,100円の増額になります。

近年建設現場の人手不足による人件費の高騰により、修繕積立金は全体として値上がり傾向にあります。修繕積立金の設定が適切であるかどうかは、物件選びに際して一つの重要な判断要素になります。これから不動産投資を始めようと思っている方(や居住用のマンションの購入を考えている人も)は是非上記の内容を参考にしていただいて、物件選びの参考にしていただければ幸いです。

*修繕積立金の価格が妥当かどうか見極めるには*
「投資物件の修繕積立金が安くてラッキー♪いえ、もしかするとそれ、キケンかも・・・」

では今回のガイドラインの改定により、ワンルームマンション投資が今後どのような影響を受ける可能性があるのかを、次で述べていきましょう。

マンションの管理状況が物件の評価を左右する時代がやって来る!?

まず今回のガイドラインの改定により、修繕計画を立てる際の基準がより一層厳しくなりました。マンションがより長く良好な状態で保持し続けるには定期的な修繕工事が必要不可欠ではありますが、土台となる修繕計画の基準が厳しくなったため、管理会社は今まで以上に緻密な長期修繕計画を練る必要性が出てきたといってもよいでしょう。

今回のガイドラインの改定は来年4月から施行が予定されている「管理計画認定制度」とも関係しています。この制度は一定の基準を満たし良好に管理されていると判断されたマンションを認定する制度になります。まだ詳細は明らかにされていませんが、認定を受けたマンションは税制上の優遇措置などを与えられ、国全体としてマンションの管理水準の底上げを行なっていく流れになるのではないかと思われます。

物件を購入するさい金融機関でローンを組む方が大半だと思いますが、どの物件にどのくらいまで融資できるのか、金融機関側は様々な基準に基づき事前に精査しています。そして現状は物件の評価基準に管理状況などは含まれていないことが多いです。しかしこの流れが続いていった場合、新築中古に関わらず物件の評価基準に管理状況が含まれていく、いわゆる「修繕計画がしっかりとしていて良好に管理されているマンションが評価される時代」がやって来るのではないかと思います。

また現在、修繕積立金不足により適切な修繕が行えていない物件など、最低限の管理基準すらクリアできていない物件が至る所に散財していると言われています。長期修繕計画のガイドラインが改定され良好に管理されているマンションの認定制度が始まることにより、管理会社のレベルアップを図るとともに今後は中古マンションの流通がより一層活性化していくのではないでしょうか。

いずれにせよ現状で物件選びの際にマンションの長期修繕計画や修繕積立金が適切かどうかまで熟慮して判断している人は少ないかと思います。今後は是非そのような視点も持って物件選びに臨んでいただければと思います。

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