近年、一部で問題も発生している一括借上契約。実際のところ、どれくらいリスキーなものなんでしょう?
まず一括借上契約とは、大まかにいうと不動産会社が物件オーナーから物件を借り受け、それを入居者に貸し出す仕組みのことです。物件オーナーが受け取る賃料は、入居者が払う家賃から不動産会社の手数料を差し引いた金額になりますが、かわりに契約期間中は空室時でも賃料が受け取れる「空室保障」が付き、家賃回収やクレーム対応といった「賃貸管理」を不動産会社に任せられるのが一般的です。
では、不動産会社の側から見た時、果たしてどれくらい儲けが出るのか。一般的なモデルケースを使って見てみましょう。
なぜ「空室保障」してもサブリース会社が成立するか
家賃10万円の物件で、オーナーに毎月入る一括借上額(賃料)が9万円であるとします。つまり不動産会社の毎月の手数料は1万円です。こうした管理物件を不動産会社が1万戸持っていて、入居率が95%だとすると、10000戸×10000円×0.95=9500万円が毎月入る計算に。これを年間にすると、ざっと11億4000万円。凄い数字になりますね。実際に、こうしたビジネスモデルをこの規模で展開しているサブリース会社は数多くあります。
しかし、ここで素朴な疑問が一つ浮かぶかもしれません。それは、空室時も不動産会社はオーナーに賃料を払わなくてはいけないのに、不動産会社はなぜ破綻しないのか??
その理由は、賃貸借契約の仕組みにあります。物件の貸主と借主の間で結ばれる賃貸借契約では、退去をする数日前に借主は貸主に通知を出す決まりになっていることがほとんどです。
その日数は契約によりますが、50~60日前というのが多いです。だから不動産会社は実際に借主が退去する前に、ウェブに募集広告などを出して空室を埋められる。だから間を空けずに入居者を入れ替えていくことが可能なんです。
では、そんな一括借上契約にはどんなリスクが考えられるかというのを以下で検証していきましょう。
まず挙げられるのが、最初に設定された一括借上額は、将来下がることもありえるという点です。やはり物件は経年しますので、ローン期間中の30数年間、家賃を一度も下げずに維持し続けるというのは簡単ではありません。だから不動産会社の方からオーナーに賃料の見直しを申し出ることがあります。
一括借上額が高すぎる会社ほどキケン!?
ただ、一括借上額の規定は契約によりまちまちです。10年間は固定で、その後は2年ごとに契約更新というケースもあれば、5年間固定の場合や、最初から2年毎更新の場合もあります。逆に、物件の立地がよかったり、契約時の不動産会社の家賃設定が的確だったりで、30数年間全く一括借上額が変わらないケースも少なからずあります。できれば、こうした会社を狙いたいところですよね。
逆に絶対に避けたいのが、賃貸ニーズが明らかに低い立地や、賃貸ニーズに対して家賃設定額が高すぎる物件です。これこそが、近年いくつか問題になっているケースです。
問題になったのは、地方の利便性が悪い場所など賃貸ニーズが低い立地の物件や、相場より明らかに高い家賃設定でありながら、当初の賃料が今後もずっと続くようなことをうたい、契約にこぎつけていた一部の不動産会社です。また不動産会社に悪気がなくても、物件を年間に何十棟も建てていれば、見立てが甘い物件が一部混ざってしまうこともあるでしょう。
こうした物件は、最初の数年はいいとしても、次第に部屋が埋まらなくなったり、空室を埋めるため家賃を大きく下げざるを得なくなったりするのは必然です。もちろんオーナーが受け取る賃料にもしわ寄せがくるでしょう。最悪、不動産会社の経営が立ち行かず、破綻することもありえます。そんな事態になれば当然、最初に描いた投資プランは大きく崩れてしまいますよね。
それと不動産投資というと、リフォームや修繕などで突発的に出費が発生するのでは?という心配もあるかと思います。これに関しては、一括借上契約では契約時に「○年経った時にこんな修繕を行います」といった計画を取り交わすの一般的です。だから場当たり的にリフォーム・修繕工事が発生するというリスクはそれほど大きくはありません。
契約時にリスクを回避すれば、“超安定投資”に
では反対に、一括借上契約にはどんなメリットがあるのでしょう? それはなんといっても「安定収入」と「手間のかからなさ」にあります。入居者の有無に関わらず賃料が毎月入ってくるというのは、まさしく「安定収入」です。そして「空室が出たらどうしよう」という心配がないため、気持ち的にも非常にラクでしょう。
また賃貸管理業務も不動産会社に任せられるので、いってしまえば契約後は特にやることはなく、通帳を眺めていればOKなわけです。ですので仕事が忙しくて賃貸管理を自分でできない方や、高齢で賃貸経営が難しいという方でも、無理なく不動産経営に携われます。
そうしたメリットをきちんと享受するには、やはり契約時に内容をきちんとチェックし、前述のようなリスクを回避することがポイントになります。明らかに賃貸ニーズが低い立地ではないか、家賃の設定や将来の家賃計画に無理がないか。また賃料の改定やリフォーム・修繕に関する規定はどのようになっているのかなどを、納得がいくまでチェックするようにしましょう。
また不動産投資では、一括借上契約とは別に「集金代行」という契約形態もあります。こちらも管理会社に手数料を払って賃貸管理を任せるものですが、空室保障は付いていません。その分、管理会社に支払う毎月の手数料が割安で、かつ入居者が支払う礼金や更新料がオーナーの取り分となります(一括借上契約では、礼金や更新料は不動産会社の取り分となるのが一般的です)。
もちろん集金代行には集金代行で、不意に空室が数ヶ月続き、ローン返済のために貯金を切り崩すはめになってしまうかも、というようなリスクもあります。
また、不動産会社を一切通さず、賃貸経営を全て自分で行うという選択肢ももちろんあります。管理会社への手数料がかからず、敷金・更新料を全て受け取れるので、金額的なリターンはこれが一番大きいですが、そのぶん空室リスクや賃貸経営の労力が発生します。
要はどれがいいという話ではなく、それぞれに良し悪しがあるということなんです。ご自分の状況やタイプと照らし合わせ、ぜひ一番合うものを選んでいただければなというのが本音です。