巷では「不動産投資は中古のほうがお得」という声も、少なからず聞かれます。確かに利回り等をふまえると、それも一理あるでしょう。
ただ、ことワンルームマンション投資においては、中古が手放しでいいとは決していえません。特に中古の表面上のメリットだけを見て投資すると、意外な落とし穴にハマる可能性があります。そこで今回は、中古ワンルームマンション投資におけるメリットとデメリットについて、詳しく紹介します。
まず中古のメリットに挙げられるのが、なんといっても物件価格が安いことです。一般的に、新築物件には不動産ディベロッパーの開発コストが乗るため、そのぶん物件価格は高くなります。対して中古物件にはそれが乗らないため、新築より割安になることが多いです。
また、そこには日本人の“新築志向”も絡んできます。多くの人が、まだ誰も住んでいないまっさらな状態の物件に、大きな価値をおく傾向があります。極端な話、新築は人が住んだ瞬間、物件価格が大きく下がることになる。だからこそ築年数がたった数年であっても、新築の価格よりだいぶ安く買えるわけです。そして投資目線で見ると、物件価格が安いことは、必然的に利回り(※)を押し上げることになります。
※物件価格に対する、年間家賃収入の割合
また、中古物件は既に賃貸運用実績があるので価格の計算がしやすく、新築よりも物件価格のブレが少ないのも特徴です。同様に、購入後の運用収支をシミュレーションやすい点も強みです。
利回りがいいということは当然、家賃収入からローン返済額と管理費・修繕積立金を引いた毎月のキャッシュフローも、いいものになりやすいです。実際、新築ワンルームマンション投資だと毎月のキャッシュフローはマイナスになることが多いのに対し、中古ワンルームマンション投資ではプラスになるケースが少なくありません。
一方、中古ワンルームマンション投資を検討するなら、デメリットもきちんと押さえておきたいところです。デメリットとしてまず挙げられるのが、設備の修繕費や交換代など、突発的な出費が多いこと。たとえば旧型の給湯器をはじめエアコン、浴室乾燥機、水まわり設備の入れ替え等の出費で、時には年間20~30万円ほどかかってしまう場合があります。
もちろん新築でも何年か経てばそうしたことが発生する可能性はありますが、中古の方が当然、そのような不確定リスクは高くなります。
だから「中古なのでキャッシュフローもいいし、資金繰りは余裕だろう」とたかをくくっていると、突然の出費に右往左往しかねません。もし資金の蓄えがなければ、場合によっては他からお金を借りたり、最悪の場合、物件を手放す必要が出る可能性もあります。そこまでいってしまうのは稀かもしれませんが、不確定リスクが新築より高いことは、ぜひ頭に入れておきたいところです。
また中古の場合、たとえ取得価格が安くても、長い目線で見た場合、トータルの運用収支では劣る可能性があります。たとえば築10年の中古物件を新築より500万円安く買ったとしましょう。一見500万円得したようにも見えますが、10年落ちの分、設定賃料は安くせざるを得ないのが普通です。
賃料差が1万円だとして、以降50年間賃貸経営に回すとすると、新築よりも家賃収入は年間で12万円、50年間で600万円のマイナスとなります。こんなふうにトータルの運用収支で考えると新築とトントンか、それよりもマイナスであることも少なくないのです。
もう1つ中古物件のデメリットとして、「売却のしにくさ」が挙げられます。実は物件を購入する際のローン年数は、55年から築年数を引いた数字を最大年数とする金融機関が少なくありません。その規約だと、たとえば築年数15年の物件を取得し、それを15年後に売る場合、新たな購入者は55-30で、25年ローンまでしか組めないことになります。35年のフルローンを組めないとなると、かなり売れにくくなるのが実情です。
これが新築であれば、取得して15年後に売ったとしても、新たな購入者は35年のフルローンを組めるため、購入者が限定されません。つまり中古物件の場合、将来の「売る」という選択肢が、それなりに狭まることになるのです。
では結局、中古と新築は、どちらを選べばいいのか。結論としては、ワンルームマンション投資ならではの強みを存分に活かすのであれば新築、ただし状況によっては中古で投資を始めた方がいい場合もある。そんな着地点になります。
どういうことか、説明しましょう。向こう数年間、毎月のキャッシュフローで稼ぎたいというのであれば、たしかに中古物件の方が向いています。利回りの良さを活かし、さらに一括借上契約をせずにその手数料も浮かせば、キャッシュフローを毎月1~2万円のプラスにすることも可能でしょう。
ただしそのぶん、設備の修理・入れ替えのリスクや空室リスクは新築より高まり、賃貸経営のノウハウもある程度は学ぶ必要が出てくるでしょう。新築より手間もかかります。
対して一括借上契約付きの新築ワンルームマンション投資の方は、それとは全く目的の異なる投資法といえます。契約期間中は空室リスクがなく、専門知識もほとんどいらない。なるべく手間とリスクを抑えながら物件を持ち続け、家賃収入を何十年にもわたってコツコツ得続ける。それにより、資産を着実に形成していく。要は時間を利用することで、ほぼ何もせずに資産を構築する“長期目線”のビジネスモデルといえます。
そうしたワンルームマンション投資ならではの特徴を最大限に活かすには、やはり新築がベストになるでしょう。中古でもそうした長期目線の投資法を目指せないことはないですが、新築よりはリスクや手間が発生しやすく、ワンルームマンション投資としては少し中途半端なものになりがちです。
逆に、前述のように向こう何年かのキャッシュフローを重視する場合や、新築の価格ではフルローンが組めない場合などは、中古が大きな選択肢となるでしょう。
ちなみに築2~3年の中古ワンルームマンションを、新築価格より500万円くらい安い値で買えるのであれば、中古・新築のいいとこどりに近い形で運用できる可能性もあります。とはいえ、そちらはそちらで市場に出回る数が多くなく、物件を探すのに骨が折れたり、運に左右されたりというデメリットを抱えます。