不動産投資業界が取り入れる不動産テックの数々
「不動産テック」の進化と導入により、不動産投資業界に、新たな風が吹こうとしています。
不動産テックとは、テクノロジーの力を使い、不動産に関連する事業や、物件そのものに新しい価値を生み出すことです。AIや、IoTなどを活用した住まいのスマート化、VRを利用した物件のバーチャルツアー、オンラインでできる住宅ローン選びなど、領域は多岐にわたります。
わくわくするような画期的なサービスに溢れる不動産テックですが、実際に不動産投資会社は、現場でどんなテクノロジーを取り入れているのでしょうか。そして、今後注目すべきテクノロジーとはどんなものでしょうか。
テクノロジーを使って、より住みやすく・便利な家をつくる
不動産投資会社が導入している不動産テックの代表的なものに、VRを使った不動産の内覧、いわゆるバーチャルツアーがあります。数年前から実施されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって緊急事態宣言が出された今年は特に需要が伸びました。外出が思うようにできなかったことで、オンラインで物件探しをしたいというニーズが高まったのです。
VR機器を使い、家にいながら仮想空間で物件の内覧ができるバーチャルツアーは、二次元の情報ではわからなかった物件の高さ・奥行きなどが、まるでその場にいるかのように見ることができます。特に新築物件では、バーチャルツアーがメジャーになりつつあるようです。
また、これまで不動産投資というと、担当者との直接のやり取りが欠かせないものでした。しかし、売買契約など重要事項に関する説明も、最近ではZOOMなどのオンラインツールを使うケースが増えています。面談や説明のためにわざわざ店舗まで足を運ばなくてもよくなったことは、顧客にとっては大きなメリットです。
物件所有者と利用者をマッチングさせるサービスも、テクノロジーの進化によってさらに便利になっています。
オーナーが所有する物件情報をオンライン上に公開し、顧客がそこに問い合わせることでマッチングが成立するというパターンはもちろんのこと、不動産会社やリフォーム会社、はては税理士や代理人など、不動産投資に関連するあらゆる業者とのマッチングも可能になりました。
これらの不動産テックは、顧客が安心して不動産投資ができるような環境をサポートしてくれます。
不動産投資を検討する人が知っておくべき不動産テックとは
さて、不動産投資用の物件として、最近注目されているのがスマートホームです。IoTやAIの技術を活用し、快適な住空間を実現してくれるスマートホームは、不動産テックの中でも、特に期待されている分野です。エアコンやテレビ、照明など家中の家電を、スマートフォンなどのデバイスを使って、一元管理することができます。
スマートホーム化の第一歩として、よく取り入れられているのが、スマートキー。自宅の鍵の開閉を、スマートフォンで操作するというものです。細かい機能はメーカーによって異なりますが、何時に誰が開閉したかクラウド上に記録が残せたり、時刻に合わせて自動で鍵の開閉ができたりと、家のセキュリティを高めることができます。大規模な工事が不要ということもあり、現在急速に普及しています。
ほかにも、朝起きる時間に合わせてちょうど良い室温にする、帰宅に合わせてお風呂を沸かす、お掃除ロボットを稼働させるなど、対応する家電(スマート家電)さえ揃えれば、家全体をスマートホーム化することもできます。
スマートホームで使われるデバイスは、スマートフォンだけでなく、声で操作できる音声認識タイプもあります。音声認識なら、高齢者や体が不自由な人でも、自分で家電を使うことができます。このように、個々のライフスタイルに合わせて、どのように取り入れるかを決められるのもスマートホームの魅力です。
また、スマートホームはコンピュータで制御されているため、機能が刷新されれば、その都度アップデートすることができます。トレンドが目まぐるしく変わるデザイナーズ物件と異なり、最新の状態をキープできるスマートホームは、投資用物件として大きな可能性を秘めています。
これから発展が期待される、契約書、ローン関連の領域
不動産テックの領域のひとつに、クラウドファンディングがありますが、これは不動産投資における新しいビジネスモデルです。
クラウドファンディングで出回る物件の中には、購入価格が1000万円、年間の家賃収入が100万円で、利回りが10%など好条件なものを多数見かけます。ただし、好条件の物件ほど、現金・即日支払いのみなど、購入に条件がつきます。
銀行に融資を頼む時間もないと、一人で購入するのは困難ですが、クラウドファンディングで出資者を集めれば可能です。クラウドファンディングによる不動産投資のスキームは、出資者を集めて好条件の物件を購入し、高利回り分の手数料を引いた分の利益を、出資者に配当します。「掛け金の少ない一口からできる不動産投資」として、広まりつつあります。
ほかにも、まだあまり知られてはいませんが、ローンや保証関係にも不動産テックの波が来ています。
たとえば、数ある国内住宅ローンの中から、その人に最も適した住宅ローンを提案・比較をしてくれる、あるいは物件購入前に住宅ローンの借り入れ可能額を教えてくれるといった不動産テックです。
不動産の申し込みや、融資のための金融機関とのやり取りを、オンラインで一元化するプラットフォームも登場し、複雑だった不動産投資はどんどん簡略化してきています。
とはいえ、この領域の不動産テックは、まだ十分な機能を備えているとは言えず、こと日本では、海外に比べてローンや保証に関する不動産テックが遅れているという指摘もあり、今後に期待したい分野です。
もう一つ、今後注目されていく分野として、契約書の電子化があります。不動産の契約というと、書類が多く、面倒かつ難しいというイメージが根強くありました。しかし、新型コロナウイルスでテレワークが促進された関係で、各業界では今、印鑑不要の電子契約書の導入が進められています。不動産業界も近い将来、物件の取引がすべてオンライン上でできる可能性は大いにあります。
今後、不動産投資を検討している人は、急速に進化を遂げる不動産テックの分野もチェックしておくといいでしょう。